第二種電気工事士(国家資格)の免状があると、自宅の電気工事が合法的に行えるようになります。しかし、電気工事士はその他の資格と比べると免状取得までの道程が大変です。第二電気工事士の試験は、筆記試験に合格した後に技能試験にも合格しなければなりません。
試験時期も2か月程度離れています。申し込みから合格して免状を手にするまで半年以上掛ります。たとえば、上期試験は3月に申し込んで免状を手にするのが9月か10月頃です。
このページでは、第二種電気工事士の技能試験について、自分自身の体験に基づいた対策をまとめています。技能試験の練習は筆記試験の合格後に行い、その成果もあって無事に合格することができました。現在は第二種電気工事士の免状を手にしています。
免状取得にかかる費用と筆記試験の話題は下記のページをご覧ください。
第二種電気工事士の技能試験対策について
技能試験は課題を40分以内に欠陥なしで施工する
第二種電気工事士の技能試験は、予め公表されている13問の課題からいずれか1問が出題されます。その課題を40分という制限時間内で欠陥なしで施工完了することによって合格となります。
13問の課題は、それぞれに特徴があって難易度もやや異なります。それぞれの課題は個々人によっても得意不得意があるため、苦手な課題は特に入念に練習しておく必要があります。
しかし、技能試験の合格率は7割前後であることから、多くの方が練習を重ねて挑むことで合格を勝ち取っているといえます。筆記試験の合格者は練習次第で十分に合格を目指せます! 筆記試験の合格通知が郵送されてからでも練習時間はまだあります。絶対に諦めないでください。
課題の内容を理解することが合格への近道
技能試験に合格するためには13の候補問題の内容について熟知することが肝要です。それは技能試験の練習を行う前に、各問題において、どのような部材が用意されており、どのように施工するのかを理解しておくということです。
令和4年度のものですが、13の候補問題の単線図が以下の資料にまとめられています。
(参考)
令和4年度第二種電気工事士技能試験候補問題の公表について(電気技術者試験センター)(PDFファイル)
実際の試験で配付される問題用紙と各問題の模範解答は以下のリンクから閲覧することができます。試験当日は都道府県(会場)ごとに異なる問題が出題されます。
(参考)
令和4年度第二種電気工事士上期技能試験(令和4年7月24日実施)(電気技術者試験センター)
これとあわせて、種々の作業において何が欠陥にあたるのかについても把握しておかないといけません。欠陥の判定基準は、試験を主催している電気技術者試験センターの公式サイトに資料が掲載されています。適切な施工と欠陥が判別できるように写真付きで解説されています。この資料は試験前に必ず一読しておいてください。
(参考)
電気工事士技能試験の概要と注意すべきポイント (2022年3月更新)(電気技術者試験センター)(PDFファイル)
各候補問題の特徴および施工時の注意点
各候補問題の特徴と施工時の注意点を簡潔にまとめておきます。
番号 | 特徴的な部材 | 注意点 |
No. 1 | ○EM-EEFケーブル2.0mm ○ホタル・スイッチ・スイッチ&渡り線 |
EM-EEFケーブルは硬い! ホタル~スイッチの配線! |
No. 2 | ○2口コンセント ○確認表示灯(常時点灯)・スイッチ &渡り線 |
常時点灯の配線! |
No. 3 | ○タイムスイッチに見立てた端子台 | 端子台の配線! |
No. 4 | ○単相100V&三相200V ○スイッチ・コンセント&渡り線 |
端子台の配線! |
No. 5 | ○単相100V&三相200V ○スイッチ・スイッチ・コンセント &渡り線 |
スイッチ・スイッチ・コンセントの配線! |
No. 6 | ○3路スイッチ ○露出形コンセント |
3路スイッチの配線! |
No. 7 | ○3路4路3路スイッチ ○アウトレットボックス |
3路4路3路の配線! |
No. 8 | ○VVRケーブル2.0mm ○リモコンリレーに見立てた端子台 |
VVRの剥き方! 端子台の接続は「ケーブル3本」と 「ケーブル2本で渡り線」のパターンを確認! |
No. 9 | ○接地極付接地端子付コンセント | |
No. 10 | ○配線用遮断器 ○確認表示灯(同時点滅)・スイッチ・ コンセント&渡り線 |
配線用遮断機の芯線差込み具合! 同時点滅の配線! |
No. 11 | ○アウトレットボックス ○ねじなし電線管&IV線3本 ○スイッチ・コンセント&渡り線 |
ねじ切りを忘れない! ボンド線の接続も練習! |
No. 12 | ○アウトレットボックス ○PF管&IV線3本 ○スイッチ・コンセント&渡り線 |
PF管の施工! |
No. 13 | ○VVRケーブル1.6mm ○タイムスイッチに見立てた端子台 |
VVRの剥き方! 端子台の配線! |
スイッチ・コンセント等の結線は、正解となる配線が複数存在する場合があります。配線方法は教科書や動画によって異なるものが採用されていることもありますので混乱しないように注意してください。
また、常時点灯、同時点滅、異時点滅の配線の違いを理解しておく必要があります。
これらの点については、試験当日までに動画や教科書でしっかり確認しておいてください。
第二種電気工事士技能試験の準備
【重要】試験当日に持参するものを確認する
技能試験の当日に持っていくものを確認しておきましょう。持ち物は受験票にも記載されています。
2)筆記用具
・鉛筆&鉛筆削り
・シャーペン
・消しゴム ←忘れがち
・3色(4色)フリクションボールペン
3)マスク
4)アナログ腕時計
5)指定工具
6)手袋
7)教科書
8)身分証明書(受験票を忘れたときに使用)
9)その他(絆創膏、ティッシュ等)
受験票は必須ですが、忘れたときのために運転免許証のような写真付きの公的な身分証明書を持っておくと安心です。それと受験会場をよく確認してください。技能試験の会場は筆記試験の会場と異なることがあります。
ひとつの参考として、令和4年度下期の12月24日(土)・25日(日)の試験会場は下記のページから確認することができます。
(参考)
令和4年度第二種電気工事士下期技能試験会場案内図について(電気技術者試験センター)
作業前に複線図を書く方は3色フリクションボールペン(消せるタイプ)があると便利です。また、ケーブル外装にしるしを書きたい方は細字のマジックがあると便利です。3色フリクションボールペンでも薄らと書くことができます。インクの残量も忘れずに確認しておいてください。
マスクは時期的に必須です。忘れた方は駅前のコンビニで購入してください。
時計はアナログ式でなければいけません。デジタル時計やAppleWatch等は使用できません。会場となる専門学校や大学の教室には時計が設置されていないことが多いです。腕時計は必須です。
指定工具がすべて揃っているか出発前に確認してください。前日まで練習をしていると工具の入れ忘れが生じることがあります。
手袋はあったほうがよいです。100均の薄手の手袋が手を圧迫せず使いやすいです。試験では緊張のあまり力んで工具や芯線で手を突いてしまうことがあります。バンドエイドやハンカチなども用意しておくと止血に役立ちます。
冬場はひざ掛けやカイロがあると寒い教室だったときに調整できます。
教科書は着席時間までは読んでおくことができます。しかし、技能試験開始まで30分近く待機や説明等で何もできない時間があります。コーヒーやお茶を飲み過ぎるとお手洗いに行きたくなってしまうので注意してください。
技能試験に必要な工具を揃える
技能試験の工具はホーザンがセット販売しているものが最適です。技能試験の会場を見渡したところ半分近くはホーザンの工具セットを使用しているようでした。
個別に揃える場合は次の工具を用意します。ただし、個別に揃えると逆に高く付く恐れがあります。圧着工具が特に高いです。
ドライバー
プラスドライバーとマイナスドライバーが必要です。プラスドライバーは一般的な2番のものでOKです。
しかし、マイナスドライバーは刃先が5.5mmの製品を選んでください。先端幅が6mmの一般的なマイナスドライバーは、器具の電線外し穴に入らなかったり入れにくかったりします。
普通のドライバーは上述の適合サイズの製品を揃えるとプラスとマイナスの大きさが異なります(写真参照)が、電工ドライバーという商品名のものはプラスとマイナスで大きさが統一されています。大きさが揃っているほうが持ち替えたときに違和感を覚えにくく使いやすいといえます。電工ドライバーをホームセンターで手にとって見てみてください。
いずれも柄が長すぎる製品は使いにくいので避けてください。75mmくらいが適切です。工具セットに付属しているドライバーは、プラスとマイナスともに柄が短くて握り手のサイズも揃っています。
ペンチ
ペンチは175mmかつJIS規格の製品を選びます。そうすると芯線を差込形コネクタに最適な12mmでカットすることができます。
ケーブルストリッパー
ケーブルストリッパーは、ケーブルの切断、ケーブル外装の剥離、芯線被覆の剥離、ケーブルと芯線の測定、芯線の輪作りに使える優れた工具です。試験時間のほとんどはこれを持って作業することになります。
この工具を使いこなせるかどうかで合否が決定するといっても過言ではありません。使うのに慣れとコツが要ります。
各社から同じような製品が出ています。国産品であれば何でもOKです。
圧着ペンチ
圧着ペンチ(ハンドプレス)は、結線作業におけるリングスリーブの小または中の圧着作業に用います。工具を個別に選ぶ場合はコスト的にロブスターを選ぶことになります。それ以外の製品を選ぶと工具セットよりも割高になります。
ウォーターポンププライヤー
ウォーターポンププライヤーはアウトレットボックスを使う課題で使用します。使用場面は限定的ですが持っていて損することはありません。
ホーザンのセットに付属しているものは、コンパクトサイズですから技能試験向きといえます。
電工ナイフ
電工ナイフは不要としている方が多いですが、使い方が分かっていると重宝します。
たとえば、エコマテリアルケーブルの外装が上手く剥けないときに、切断面に電工ナイフを軽く入れてやると素早く綺麗に切れます。また、VVRケーブルの外装がうまく剥けないときも電工ナイフで対応できます。
スケール
スケールは金属製のコンベックスよりも布尺のほうが使いやすいです。布尺(材質は布ではなくファイバーグラス等)はセリアやダイソーの手芸または文具、あるいは梱包用品のコーナーに置いてあります。
手袋
手袋は素手より作業しにくくなりますが、ケガ防止になるため練習時から着用されることをおすすめいたします。100均で売られている薄手のものが使いやすいです。邪魔に感じられる場合は、片方だけ着用するという手もあります。なお、分厚い手袋やサイズのキツい手袋は作業効率が明らかに悪くなってしまいます。
中古の工具について
長らく放置された工具や中古品の工具は、切れ味が落ちていたり壊れるリスクが高かったりすることからおすすめできません。万が一にも試験中に故障するようなことがあれば目も当てられません。
また、ハンドプレスも使い古されたものは刻印が薄れている可能性があります。刻印がないと欠陥です。
技能試験の練習用部材を用意する
このような部材はホームセンターでは全てを揃えることができません。コンセントやスイッチは手に入りますが、特殊なケーブルが手に入りません。ですので、セットがおすすめです。それとともに、必要な練習要部材を追加で用意しておきます。
練習用部材は各社からセットになったものが販売されています。そちらを用意されるのが手っ取り早いです。練習用部材と工具が同梱されたものもあります。
多くの製品は1~3回分がラインナップされていますが、普通の方は1回分で十分です。2周目は短い状態のケーブルで無理矢理にでも練習しましょう。
慎重派の方、不器用な方、予算に余裕のある方などは練習が複数回できるものを選んでください。
第二種電気工事士技能試験の練習
動画を用いた学習で合格がより確実なものに
筆記試験では教科書の内容を理解することが必須でした。しかし、技能試験の場合は筆記試験と比べると教科書の必要性は低いです。
というのも、技能試験ではYouTubeの解説動画がひじょうに分かりやすくて重宝するからです。YouTubeの解説は、実際の施工を解説付きで確認できるため、具体的にどういう風に作業を進めていくのかが視覚的かつ直感的に分かります。
YouTubeの解説は色々ありますが、工具や練習用部材でお馴染みの「ホーザン」の解説か、または「日本エネルギー管理センター」の解説を見るとよいと思います。どちらも優れた解説であることに間違いありません。優れた講義を無料で視聴できるとは、良い時代になったものです。
私は日本エネルギー管理センター専任講師の西山先生の動画を拝見することで作業内容を完璧に把握することができました。候補問題の動画以外にも、電気の基本知識に関する動画がたくさんあるので、暇なときに見て学習を進めるとよいかもしれません。
(参考)
電工試験の虎_ホーザン(YouTube)
日本エネルギー管理センター事務局(YouTube)
解説者によって手順が違ったり雰囲気が違ったりしますので、自分に合ったほうを選んでください。後はその先生に従って13の候補問題の動画を継続的に視聴することで、各課題の施工の手順とコツが理解できるようになっていきます。
技能試験の練習を始める前に動画で学習を進めます。この点が超重要です! なにも理解していないまま練習を始めると部材を無駄にしてしまいます。それに制限時間を大幅にオーバーしてしまいます。
1周目は通常視聴、2周目は1.5倍~2倍速、3周目は苦手な課題と苦手な作業の部分のみを確認するというかたちでOKです。通勤通学時、介護・育児・家事の合間に少しずつ進めていきましょう。難しいところや分からないところは巻き戻して再確認してください。それを技能試験の2~3週間くらい前までに終わらせて、そこから本格的な練習に移ります。
練習用部材が限られているにもかかわらず、何ヶ月も前から練習を始めてしまうと試験前に作業の感覚がなくなってしまいます! 練習用部材がいくらでもあるのであれば話は別ですが……。
ですが、時間に余裕のない方は1か月以上前もしくは筆記試験直後(=自己採点による合格判定後)から練習に移ってもよいと思います。空いた時間で少しずつ進めるしかありません。
教科書があると疑問点を解決できてミスを減らせる!
動画による学習だけでも十分といえるかもしれませんが、教科書を用意して細かい作業の手順を確認しておくと確実です。
教科書には各課題の細かな作業が拡大写真とともに掲載されており、ありがちな欠陥に対する注意喚起も行われていることから、その有用性は高いといえます。また、教科書では、単線図、複線図、写真図を比較しながら内容を理解することもできます。
練習を始める前に、単線図を見た瞬間に複線図が思い浮かぶようにしておくと、技能試験で複線図を書く作業を飛ばせます。
技能試験の会場を見渡したところ、半数以上が何らかの教科書を読んで待機していました。その中の一部はホーザンの練習用部材に付属している冊子を確認していました。受験費用も馬鹿になりませんし、ミスして受け直すのは最悪ですから、教科書は用意されることをおすすめします。
教科書のおすすめは筆記試験と同じシリーズの「第2種電気工事士技能試験すぃ~っと合格」です。これから試験を受ける方は2024年版を選んでください。
13の候補問題の手順がカラー写真とともに丁寧に解説されています。また、やってしまいがちな欠陥についても取り上げられています。教科書は手の空いた時間に1問だけ手順を確認するといった使い方もできます。
教科書中のQRコードをスマホで読み取って映像を確認することができます。このように最近ではQRコードを読み取らせるような教科書もちらほら出ていますね。
ちなみに、DVDも付属しています。DVDのメニューは上記の内容となっています。写真を拡大して確認してみてください。
YouTubeの動画を見て勉強する方は、DVDは見なくても差し支えありません。
技能試験の教科書は、同シリーズの筆記試験の教科書と比べると半分くらいの厚みです。
技能試験の解説ということもあって、文章は少ないのでパラパラ捲って作業の写真を確認していくという使い方になります。
部材を無駄にしない工夫と練習のコツ
技能試験の対策は、作成する回路について十分に理解してから練習を始めることがなによりも重要です。テキストやYouTubeの解説動画を何度も見て、全候補問題の施工内容と欠陥事例を把握した後に練習に取り掛かってください。
訳も分からぬ状態で「とりあえずやってみようか」などと小冊子を見ながらいきなり練習を始めることは愚策というほかありません。ケーブルやリングスリーブを無駄にするだけです。練習で40分~1時間以上掛ったと言っている方は方法が最初から間違っているのです。
練習は後回しにしてください。筆記試験が終わった当日に自己採点で合否判定を行った後、技能試験までに時間的余裕があるはずです。まず映像で作業の流れをある程度覚えてから練習を始めるようにしてください。そうすることで、最初から40分を切って完成させることも十分に可能で、しかも余計な施工ミスを減らすことができます。限られた材料が無駄になることもありません。
あとは自分が苦手とする作業、たとえば「輪作り」や「3本以上の圧着」などを候補問題とは別に練習します。簡単な課題は2周目の練習を行う頃には20分前後で完了できるようになります。「素早く正確に」を実践することで、見直しと修正の時間に余裕が生まれます。そしてあなたは合格を手にします!