アコースティックギターを買ったものの音が大きすぎて近所迷惑になるかもと不安を抱く方は想像以上に多いと思います。カラオケボックスや練習スタジオに行くという方法もありますが、毎日のことになると金銭的にも時間的にも無理があります。そういう問題を抱えている方は、どうにかして音を小さくする方法はないものかと考えるはずです。そうして、アマゾン等のショッピングサイトで検索してみると真っ先に出てくる製品がサウンドホールカバーです。
ここではサウンドホールカバーの定番であるD’Addario(ダダリオ)の「Screeching Halt PW-SH-01」という製品を取り上げています。
使用される場合には事前にサイズをしっかりと測っておく必要があります。このページには製品の細かいサイズを記載していますのでぜひ参考にして下さい。
サウンドホールカバーの意味と役割
サウンドホールカバーはそもそも消音を目的とした製品ではありません。ここがとても重要な点です。この製品はエレクトリックアコースティックギター(エレアコ)をアンプ(ギター用のスピーカー)に繋いで演奏したときに、過剰なフィードバックを防いで音をピックアップ(弦の振動を電気信号に変換する装置)から上手く拾えるようにするものなのです。
たとえば演奏時の反響音が再度ピックアップに拾われるとハウリングが生じる原因になります。こうした問題をサウンドホールカバーの取り付けによって低減できるという訳です。
では、どうしてサウンドホールカバーを消音のために取り付けるという考えが生まれてくるのでしょうか。実際にサウンドホールカバーで検索すると有名メーカー品以外にたくさんの中華製品が出てきます。それらのほぼすべての製品に「弱音器」「消音用」「音量制御」「夜間練習用」などという売り文句が付けられています。このような売り文句が、サウンドホールカバー装着の主目的があたかも消音効果にあるように誤認させてしまっているといえます。
ちなみに、このような記述は、ダダリオ、ヤマハ、アイバニーズなどの有名メーカーの製品には記載されていません。
そうはいえど、多くの方は多少の消音効果を期待しているはずです。かくいう私も多少の消音効果を期待してダダリオのサウンドホールカバーを購入したところがあります。笑
ダダリオ「Screeching Halt PW-SH-01」
サウンドホールカバーの概要
ダダリオの「Screeching Halt PW-SH-01」は、アコースティックギターを演奏する際のフィードバックをカットできるサウンドホールカバーです。 不要なフィードバックやハウリングを抑えて、より大きな音量で演奏することができます。
このサウンドホールカバーは標準的な4インチのサウンドホールに適合するようです。素早く簡単に取り付け取り外しができて、機材を加工する必要もありません。
この製品の特徴
パッケージ裏面には製品の詳細と特徴が記載されています。適当に訳したものを掲載しておきます。ご参考までに。
・テーパーデザインによって多くのギターにぴったりフィット
・ソフトラバー素材のためギターの仕上げに対して安全
・素早く簡単に取り付けと取り外しが可能”(出典:パッケージ裏面)
*製品名のScreeching Haltはこの場合「甲高い音を抑える」のような意味かも。
シンプルなデザイン
ダダリオの「Screeching Halt PW-SH-01」は、販売サイトの写真では表面に「Planet Waves」というロゴがデザインされています。しかし現行のモデルでは「Planet Waves」という表記はなくなっているようです。
パッケージ台紙に取り付けるようの穴が中央に二つ空いています。使用にはまったく支障はありません。本製品は「USA MADE」とあるようにアメリカ製です。
販売サイトには内径以外の細かい数値が上がっていません。ここでは私が個人的に測定した値を掲載しています。ソフトラバー素材という製品の仕様上、実測値は多少前後する可能性があります。
サウンドホールカバーはネックの付け根に干渉しないように切れ込みが入っています。
実際のサイズ
サウンドホールカバー外周(最大部)の直径は約110mm(実測値)です。写真の定規よりも記載している実測値を参考にして下さい。
C字の凹部分から測定したサウンドホールカバー外周の直径は約106mm(実測値)です。また、中央のクレーター部の直径は約86mm(実測値)です。
引っ掛け部を含むサウンドホールカバーの厚みは約14mm(実測値)です。
ギターのサウンドホールに嵌まる部分の厚みは約12mm(実測値)です。引っ掛け部は約2mmということになります。
サウンドホールに収まる内周の直径は約102mm(実測値)です。サウンドホールの直径が100mm以下の場合はまず取り付けられないと思って下さい。102mmちょうどの場合も厳しいでしょう。無理矢理取り付けるとサウンドホールが傷付く可能性があります。ゴムの伸縮性はほぼありません。
なお、ギターのサウンドホールに引っ掛かる薄い部分の長さは約3.5mm(実測値)です。102mm+3.5mm+3.5mm=109mmと外周の110mmと若干のズレがありますが、一般的な定規で測っているため多少の誤差が生じています。
実際の取り付け場面
取り付けるギターはヤマハのCPXというエレアコです。
弦の脇から挿し込んでいきます。弦に少し触れますが弦が切れそうになるほどではありません。取り外しも同様です。割とスムーズに取り付けられるように思います。
カバーをサウンドホールに取り付けた状態です。ぴったりとフィットしています。ギターを横にしたり、逆さにしたり、振ったりしても取れませんでした。
サウンドホールカバーの取り付けとフィット感は申し分ないという印象です。品質も良いと思います。
ソフトラバーという素材のためか埃が付きやすいところがあります。それと、付けたままにしておくと色移り等があるかもしれませんので、使用後は取り外して保管することをお勧めします。ラッカー塗装のギターには特に注意が必要です。
サウンドホールカバー装着による音の変化
サウンドホールカバーの装着前後で明らかに音質が異なります。その違いは誰でも判別できます。簡単にいうと音の共鳴の仕方が変わるようなイメージです。
サウンドホールが塞がれたことによって弦の響きがより強調されます。音の善し悪しについては好みが強く反映されることから、一概にどちらが良いとはいえません。
また、サウンドホールカバーを付けることで音の大きさも変わります。サウンドホールを防ぐ構造上、音がわずかに抑えられます。ただし、「消音化」や「弱音化」と呼べるほどの効果は得られません。音は抑えられてもせいぜい1割程度です。それでも、この差は大きいのではないでしょうか。
もちろん、装着するアコギの種類や個人の感覚によって感じ方が異なることは言うまでもありません。過度な期待をして購入すると肩すかしを食らうかもしれません。
とはいえ、夜の練習などで少しでも音を小さくしたいと考えている方は、本来の用途とは違ったとしてもサウンドホールカバーの取り付けも含めて総合的に対策する必要があると思います。もっとも手軽な方法として、弦のゲージを細くしたり、ピックを薄いものにしたりすることなどが挙げられます。
・取り付け取り外しが簡単
・フィードバックとハウリングが低減
・低価格
・音をわずかに抑えることが可能
さまざまな要素を考慮するとダダリオの「Screeching Halt PW-SH-01」は購入して良かった製品でした。