キッチンの蛇口に汚れや緩みが目立つようになってきたため、DIYで新しい水栓に取替えてみました。多くのご家庭で使用されているキッチン用のシングルワンホール混合栓は、ホームセンターやショッピングサイトにて安い製品であれば一万円程度で購入することが可能です。本体と専用工具をあわせて入手したとしても安価で済ますことができます。
水栓金具を新しいものに交換するとき、以前から付いている古い水栓を取り外す必要があります。キッチン用水栓の商品レビューを読むと「取付作業は簡単にできる」といったことが書かれています。それは事実ではあるものの、実際のところ古い水栓の取り外し作業に手間取る可能性が高いです。
15年から30年程度使い続けている混合栓は各部が固着しており、力をかけても外せない場合があります。また、キッチンシンク下部から奥に手を伸ばして作業しなければならないこともあり、ナットを一つ外すだけでも相当な時間がかかってしまいます。作業を手際よく進めるためには、交換作業に入る前に必要な工具の種類やサイズを念入りに確認することが肝要です。
それと、混合栓を取り外す前に、もう一つの問題が発生することがあります。止水栓を開閉する部分がハンドル式ではなくマイナスネジ式になっているものは、ネジが固着して動かない場合があります。私の場合は止水栓が閉められず作業を中断して次の日に工具を買いに行くはめになりました。このように予想外の問題が生じることもあります。
とにかく情報収集と事前の準備が必要です。ここでは混合栓を取替える作業の全工程と注意点についてまとめています。混合栓によって着脱方法と必要工具は異なりますが、一つの作業例として皆様の参考になれば幸いです。
古い混合栓の取り外し方を調べる
混合栓の品番を調べる
混合栓の固定方法は「ナット式」「ボルト式」「上面施工式」に大別されます。固定方法の詳細は品番を検索するとすぐに分かります。もしくは、混合栓の固定部をキッチンシンク下から覗き込むか、スマホのビデオ録画機能をオンにしてシンク下に挿し込むことによって確認することができます。懐中電灯やLEDランタンで照らしておくと見やすいです。
上面施工式はキッチンの上部で固定されているため簡単に取り外すことができます。ボルト式は、混合栓を抑える馬蹄金具を固定するボルトをT型レンチやソケットレンチ等で緩めて取り外します。
もっとも厄介なのがナット式です。ナット式は大型のナットで混合栓の根元を固定しているため、外すときに専用工具が必要となる場合があります。ナット自体が一番奥にあるため作業性が劣悪です。
一般家庭の工具箱に入っている小さなモンキーレンチは開口幅が狭くて使えません。また、ウォーターポンププライヤーやモーターレンチなどは隙間に入らなかったり、工具を左右に回すことができなかったりします。ありものの工具で外したという方もいらっしゃるようですが、専用工具があると作業効率が上がります。
ただし、専用工具には複数のサイズがあり、適合したものを選ばなければ使えません。しかし、ボルトやナットの径を調べようにも、定規やノギスをあてがうことは難しいです。
今使っている混合栓の型番や品番が分かれば、取り外しに必要な工具とそのサイズを知ることができます。品番で検索すると詳細情報が出てきます。そのページで製品の寸法図を見てサイズを確認します。
混合栓のメーカーを調べる
品番や型番が分からない場合は製造メーカーから製品を特定することができます。それでも必要な情報が出てこなければ同じメーカーで同年代に製造された他製品の寸法図などからあたりをつけるしかありません。
水道の蛇口の製造販売に関わっているメーカーがいくつかあります。日本の大手メーカーは「TOTO(トートー)」「LIXIL(リクシル)」「KVK(ケーブイケー)」「SANEI(サンエイ)」「KAKUDAI(カクダイ)」などです。
以下に関連ページを列挙しています。下記のリンクをクリック(タップ)することで、該当ページに遷移します。
TOTOの製品を調べる
TOTOの公式サイトで製品情報を検索することができます。
(参考)
キッチン用水栓金具(TOTO)
品番から探す(TOTO)
建築専門家のための水まわり空間に役立つCOM-ET(TOTO)
修理施工ナビ(COM-ET)(TOTO)
品番がわからない場合(COM-ET)(TOTO)
LIXILの製品を調べる
LIXILの公式サイトで製品の一部を確認することができます。
(参考)
キッチン用水栓金具(LIXIL)
キッチン用水栓ワンホールタイプ(LIXIL)
「水栓金具の品番を確認したい。品番シールはどこにありますか?」(Q&A)(LIXIL)
KVKの製品を調べる
KVKの公式サイトで製品情報を閲覧することができます。古い水栓は「水栓年表」に写真と品番が掲載されています。
(参考)
電子カタログ(KVK)
KVKキッチン用水栓年表(KVK)(PDFファイル)
SANEIの製品を調べる
商品一覧ページから現行製品から販売終了製品までを検索することができます。商品ページから簡易な図面を確認することができます。
(参考)
商品一覧(SANEI)
KAKUDAIの製品を調べる
カクダイの公式サイトで2010年以降に販売された製品の情報を検索することができます。
(参考)
メンテナンス部材ナビ(KAKUDAI)
混合栓の交換に必要な工具を揃える
新しい混合栓は、モンキーレンチや六角レンチなど家庭の工具箱にある工具だけで取り付けられるものがほとんどです。
しかし、古い水栓の取り外しには、いくつかの特殊な工具が必要になる場合があります。それらの工具は家庭用の工具箱や簡易な工具セットには含まれていないため、大型ホームセンターやネットショッピングで別途揃える必要があります。
今回は必要な工具を事前に調べて新しい混合栓と一緒に注文しておきました。結論から言うと、写真左側の「台付きシングルレバーカートリッジ取外し工具」は使用できませんでした。また、使用する必要もありませんでした。一方、写真右側の「ナット締付工具」はナットを緩めるために30秒だけ使用しました。工具をナットにあてがう作業に5分かかりました・・・・・・。
この工具は対辺の寸法が異なる製品が各社から販売されています。サイズと形状が適合していればメーカーが違っていても使用できます。実際にTOTOの混合栓に対してTOTO純正品ではないSANEI社の製品を使用しました。
1~2mm大きい程度であれば結束バンドやテープを巻き付けるなど工夫して使用することができるかもしれませんが、寸法が小さかったり大きすぎたりするとまったく使えません。また、締付工具の寸法の精度はあまりよくないようです。
ナットはメーカーサイトの寸法図を予め見ていたため問題なく回すことができました。
スパナの柄に大型の六角レンチを挿し込むことでナットを簡単に回すことができます。この工具は一生に一度か二度、それも5分使うかどうかというものになります。
この工具を買うかどうか迷っている方は、ナットが手で回せるかどうか確認してから注文されることをおすすめします。
止水栓のネジが固くて動かないとき
家の止水栓はネジタイプで、過去にはマイナスドライバーで回したことがありました。
けれども、今回はどうやってもネジを回すことができず、ホームセンターで電動ドライバー用の水栓ドライバービットを購入して対応しました。このアイテムのおかげで止水栓を閉めることができました。これは使えます。
電動ドライバーを使用する場合は力のかけ過ぎに注意が必要です。止水栓が壊れて漏水する危険性があります。
作業を始める前に
水が漏れないように止水栓を確実に閉めなければいけません。また、万が一の漏水に備えて、水道の元栓がどこにあるかを確認しておいてください。
マンションやアパートであれば玄関を出たところや廊下に各種メーターが収められたところがあると思います。その辺を確認してみてください。戸建ての場合は玄関前の地面に水道メーターが埋まっています。そこに水道の元栓があるはずです。
すべての作業は自己の責任に基づいて安全に行ってください。
新しいシングルワンホール混合栓について
交換する混合栓は「上面施工タイプ」一択!
キッチンに取り付けるワンホール用混合栓は各社から様々な製品が発売されています。一万円前後の予算でも色々な製品から選べます。「上面施工」と書かれている製品を選んでください。
今回はサンエイの「シングルワンホール混合栓(K87110TJV-13)」を選びました。この製品は価格が安い割に質感が高くておすすめです。しかも日本製です。降雪地帯の方は寒冷地用の製品を選んでください。
購入時の価格は8,864円でした。専用工具代を含めると約11,000円となります。
SANEI「K87110TJV-13」のデザイン
一般の人はあまり買わない製品のためパッケージも梱包も簡素です。
この製品はJIS規格商品であり、対応している取付穴経は35~39mm、対応しているカウンター厚みは5~30mmとなっています。一般家庭にある同様のワンホール混合栓であれば置き換えることが可能です。
材質が真鍮で質感はかなり良いという印象です。作りも全体的にしっかりしていて問題はありません。
蛇口はシンプルなタイプです。
水流は泡沫吐水です。水を出すと空気が混ざって泡の混じった状態で出てきます。
ストレートの水流と比べると水がはねやすい印象を受けますが、しばらくすると気にならなくなります。水はねが気になる場合は、別売の高性能な泡沫器と交換することもできます。
また、泡沫器を付属のアダプターに取り替えると、市販されている簡易浄水器を取り付けることができます。しかし、市販の浄水器には径の異なるアダプターが付いていることがほとんどなので、そのあたりは気にしなくてもよいかもしれません。
レバーハンドルは中央が開いているため、指を引っ掛けて回すことができます。レバーの動作は軽快でひじょうに使いやすいです。
レバーは下げ止め式で、引き上げると水が出て引き下げると水が止まります。写真のレバー位置で水が止まっている状態です。
上面施工ができるタイプです。取り付けが簡単な製品を選ぶべきです。
キッチンのワークトップ(天板)と接触する部分には予めパッキンが取り付けられています。
こちらは給湯給水のホースです。ホースの長さが足りているかどうか購入前に確認してください。
混合栓の説明書と付属品
簡単な取扱説明書が付属しています。
製品の概要と取付け方法が簡潔に示されています。これだけでも問題なく取り付けられます。
製品の寸法図です。レバーの可動範囲は左右にそれぞれ45°、上下に25°のようです。
この部品が上取付フランジです。固定用の金具が上面施工できるように工夫されています。この部品をキッチンのワークトップを挟み込むように設置することで混合栓を固定します。
上取付フランジの下側の金具を閉じた状態にして、取付穴から挿し込むだけでキッチンの上から簡単に取り付けられます。
上取付フランジをワークトップに取り付けるときに、金具を展開してナットを締めるだけです。
畳んでいた金具は取付穴に入れると勝手に開きます。金具の形状がよく工夫されています。
浄水器を取り付けるためのアダプターとパッキンが付属しています。
この部品は使わないなら捨てても問題ありません。市販の浄水器にもアダプターが付いていることが多いです。
混合栓の取付に使う六角レンチと混合栓の固定ネジ用のカバーです。
六角レンチは上取付フランジの固定と混合栓本体の固定に使います。
これらは逆止弁(逆流防止弁)、パッキン、留め具です。逆止弁は温冷それぞれの止水栓に取り付けます。今付いている逆止弁はパッキンがへたっているので必ず新しいものに取り替えてください。
古い混合栓の取り外し方
古い混合栓の確認
TOTO製の古い混合栓を外します。長い間使用している水栓はキズや汚れが目立ちます。水が時々漏れることもありました。
止水栓を閉める前に洗剤や生ゴミ入れを退かして、各部を綺麗に清掃しておきます。
混合栓の裏側に工具を引っ掛ける穴が空いていますが、ワークトップとの段差があるために専用工具を使用することができませんでした。専用工具のレビューにも背面に隙間がなくて工具が差し込めないといったコメントがあったのですが、キッチン奥の壁のことだと思い込んでおり、ワークトップの段差のことに気がつきませんでした。
とはいえ、結果として引っ掛けるタイプの専用工具は使用せずに混合栓を取り外すことができました。
仕様書に専用工具の指定があっても、実際に使えるかどうかは現状を確認しなければなりません。
古い混合栓の取り外し作業
キッチンシンク下のお鍋やお醤油などをすべて移動させます。それから水漏れ対策として新聞紙やバスタオルなどを敷いておきます。
止水栓のハンドルやネジが回るかどうかも確認します。
止水栓を温水冷水ともに閉めて、蛇口から水が出ないことを確認します。
給湯管と給水管。古い製品は金属の管が剥き出しの状態で使われていることもあります。
それに対して新しい製品は柔軟性のあるホースタイプでした。
この写真をご覧いただければ、ナットのサイズをノギスや定規で測ることや、モンキーレンチやモーターレンチを挿し込んでの作業することが難しいという意味がお分かりいただけると思います。写真の左側が壁で右側が流し台になっており、わずかな空間しかありません。給湯給水の管も通っているため作業スペースが限られています。
一番奥を見ると混合栓が大型のナットで固定されていることが分かります。まず、このナットを専用工具で外します。ナットをある程度緩めることができたら後は手回しでも外せます。ナットを緩める作業よりも工具を正確な位置にあてがうことのほうが難しいです。
次に給湯管と給水管を取り外すために逆止弁のナットをそれぞれ外します。そして、逆止弁も止水栓から取り外します。
給水管や逆止弁を取り外すときに貯まっている水が漏れ出てくるのでタオルや新聞紙を敷いておいてください。
ナットや逆止弁などが取り外せたら、上部の混合栓本体を取り外します。既に隙間が空いています。
固くて動かない場合は開口幅の広いパイプレンチやウォーターポンププライヤーなどで挟み込んで回します。それから持ち上げると取り外せます。
もしかすると、ネジなどで固定されているタイプもあるかもしれません。水栓の仕様書を読んで取り外し方法をご確認ください。冒頭で紹介した引っ掛け工具を使わないといけないこともあるようです。
混合栓を上部の穴から引き抜けば取り外し完了です。
写真を撮りながらマイペースに作業していたので約45分かかっています。取り外しにかかる時間は20分から60分程度ではないでしょうか。
混合栓が取り付けられていた取付穴はかなり汚れています。簡単な掃除が必要です。
水垢汚れはクエン酸がおすすめです。サンドペーパーや金属磨きを使うとステンレスに細かな傷が付くことがありますのでご注意ください。
シンク下の木材に水がかからないように清掃します。ワークトップを綺麗に拭き上げたら、新しい混合栓を取り付けます。
新しい混合栓の取付け作業
上取付フランジの取り付け
上取付フランジの固定用金具を中央に寄せて、水栓の取付穴に挿し込みます。それから上取付フランジの向きを調整します。
側面に穴の空いている部分が真正面になります。
奥に見える金色の固定用金具が左右に広がっていることを確認します。中央にある場合は指で軽く押すと左右に開きます。
上取付フランジを固定する位置を確定したら、付属の六角レンチでボルトを締め付けていきます。
六角レンチを回してボルトを締めることで、上取付フランジをワークトップに固定することができます。
位置がズレてしまったらボルトを緩めて固定し直します。
上取付フランジと固定金具がワークトップをがっちりと挟んでいます。
なお、奥に見えている木材はワンホール混合栓取付補強板です。取付穴付近が薄い金属板のみの場合は補強が必要です。
混合栓の固定
パッキンを挟んだ逆止弁を止水栓に取り付けておきます。白いキャップはゴミが入らないようにしばらく付けたままにしておきます。
混合栓のホースをフランジの上部からゆっくりと挿し込んでいきます。
混合栓の窪みとフランジの穴が一致するように調整します。
両方の穴が一致していたらOKです。
レバーと蛇口を正面に合わせたときに使いやすい位置であることを確認してください。実際に調理や洗い物をしている人に見てもらうことが望ましいです。
取付位置が合わないようであれば、混合栓を一度取り外して上取付フランジのボルトを緩めて微調整します。
混合栓の位置に問題がなければ、固定してカバーを取り付けます。固定用のネジとネジ穴のカバーは説明書の入っていた袋に付属しています。
この部品はカバー部とネジ部に分離できます。
まず右のネジを付属の六角レンチで取り付けて、それからカバーを取り付けます。
穴が合っていることを確認して六角レンチで締め付けます。
ネジが奥まで入ったことを確認します。それから混合栓にガタツキが生じていないかを確認します。
最後にカバーを取り付けます。
カバーを取り外すときは、説明書によると粘着テープや針を使うようです。ただ、取り外しは面倒ですので位置合わせは慎重に行ってください。
逆止弁とホースの接続
逆止弁のキャップを外してホースの位置を合わせます。
逆止弁にはゴムパッキンが予め取り付けられています。
水とお湯を間違えないように接続します。ホースは多少の柔軟性があるため金属製の管よりも扱いやすくなっています。
最後に留め具をはめて接続完了です。給湯ホースも同様に接続します。
接続する際にホースが邪魔にならない位置にくるよう微調整しておくとよいかもしれません。
これで新しい混合栓の取付作業は完了です。各部の点検を行った後に、止水栓を軽く開きます。
レバーの確認と水量の調整
レバーを押し上げて水が出ることを確認します。このときに水を出しっ放しにした状態で止水弁のあたりから水漏れが起こっていないかしばらく注視してください。
特に問題がなければ止水弁を微調整して適切な水量にします。
レバーを正面にした状態で水量を確認します。水量が多すぎると水はねが酷くなります。
レバーを左にして、お湯が出るか、水量が適当かを確認します。
レバーを右にして、水が出るか、水量が適当かを確認します。
何も問題がなければすべての作業は完了です。
下調べと道具の準備が大切
混合栓の交換作業は、取り外す作業にとても時間がかかります。また、今回のように止水栓が固着して動かないということも起こります。
しかし、交換前に必要な工具をしっかり調べて、作業手順を入念に確認しておけばそれほど難しいことはありません。ただし、キッチンシンクの下に変な体勢で潜り込むことは骨の折れる作業でもあるため、ご高齢の方は無理をせず業者に依頼してください。参考までにホームセンターでは取付工賃が約16,000円と記載されていました。
新しい混合栓の取り付け自体はとても容易で、DIYに慣れている方であれば15分もあれば取り付けられます。上面施工できる混合栓は本当に便利です。
今回採用したサンエイの混合栓は価格が安いにもかかわらず、品質も良くて使い勝手も申し分ありません。なんでも新しくてきちんとしたものにすると生活が快適になりますね。水栓が気になっている方はぜひチャレンジしてみてください。