ここではintel製CPUを使った場合のPC構成案を考えていきます。予算を10万円前後としているのは、無理矢理10万円未満に抑えると中途半端なものしか出来上がらないからです。事務用であれば10万円未満でも十分です。
さて、2020年の5月~6月はintelの最新CPUシリーズと最新CPUに対応したZ490チップセット搭載マザーボードが発売されて話題になりました。しかし、発売されたばかりのCPUやマザーボードはご祝儀価格となっており、いずれもひじょうに高価で簡単には手が出せません。
そうしたことを考えると、一つ前の第9世代のCPUとZ390チップセットのマザーボードを購入するのが最適解であるように思えます。
パソコンの構成を考える
CPU
少し前に第10世代のCPUが発売されました。しかし、現状ではご祝儀相場のため気軽に買える価格ではありません。
CPUは上を見るとキリがありません。したがって、CPUは性能と価格を天秤にかけながら自分にとって最適なものを選ぶ必要があります。第9世代インテルプロセッサーの中でもコストパフォーマンスの高い「Core i5-9600K Box」あたりがそれなりの性能を誇っており、価格も妥当と思われます。参考価格は26,000円前後です(価格は日々変動します)。
Core i5-9600Kの動作クロックは3.7GHz、最大クロック(ターボブースト時)は4.6GHz、そしてコア数とスレッド数はともに6となっています。また、キャッシュは9MB、TDPは95Wとなっています
このCPUには内蔵グラフィック「intel UHD Graphics 630」が搭載されています。事務用とであればグラフィックボードを別途追加する必要がありません。
Core i5-9600KはZ390チップセットに対応しています。対応ソケットはLGA1151です。CPUクーラーが付属していない点に注意が必要です。
レビューを見ると第4世代CPUのCore i7-4770あたりからの乗り換えであれば性能は十分に向上するようです。CPUのスペック比較でも同様のことが確認できます。
Core i7-4770とCore i5-9600Kと比較すると性能に歴然の差があることが分かります。数年前の古いCPUからの変更であれば性能の向上が期待できます。
Core i7-4770とCore i5-9600Kの性能比較(userbenchmark.comより)
Core i5-9600Kと並ぶもう一つの高コスパCPUは「Core i5-9400F」です。こちらのほうが売れ筋といっても良いかもしれません。
Core i5-9400FもIntel第9世代のCPUです。Core i5-9400FはCore i5-9600Kよりも動作クロックの低い下位モデルではあるものの、私のような一般ユーザーの目的に応えられる十分な性能を持っています。参考価格は17,000円前後です(価格は日々変動します)。
Core i5-9600Kの動作クロックは2.9 GHz、最大クロック(ターボブースト時)は4.1 GHz、そしてコア数とスレッド数はともに6となっています。また、キャッシュは9MB、TDPは65 Wとなっています。TDPはCore i5-9600Kが95Wであるのに対して、Core i5-9400Fは65Wとなっている点が特徴です。
Core i5-9400FはZ390チップセットに対応しており、対応ソケットはLGA1151となっています。Core i5-9400Fには簡易なリテールクーラーが付属しているため、Core i5-9600K と違ってCPUクーラーを買い足さなくても使用できます。ただし、このCPUには内蔵グラフィックが搭載されていないため、映像出力にはグラフィックボードを別途用意する必要があります。
第4世代のCore i7-4770とCore i5-9400Fを比較すると性能に歴然の差があることが分かります。旧世代のCPUからの変更であればCore i5-9400Fでも十分な性能差があります。
Core i7-4770とCore i5-9400Fの性能比較(userbenchmark.comより)
なお、「Core i5-9600K」 と「Core i5-9400F」の性能を比べてみると、Core i5-9600Kのほうが高性能といえます。しかし、どちらもコスパの高い大人気CPUという位置づけです。
それなりの性能を求める場合にはCore i5-9600Kを選び、コスパの高さを追求する場合にはCore i5-9400Fを選ぶという形になるのではないでしょうか。
Core i5-9600K とCore i5-9400Fの性能比較(userbenchmark.comより)
CPUクーラー
CPUクーラーはサイズ社の「虎徹 Mark II」が入手も容易でお手軽価格であることから定番の製品になっています。虎徹 Mark IIはIntelとAMDを問わずさまざまな形状のソケットに対応しています。
CPUにCore i5-9600Kを選んだ場合は、CPUクーラーを別途用意する必要があります。CPUクーラーに特段のこだわりがなければ定番の製品で問題ないと思います。売れ筋の製品はネット上に情報が多いということも選択の理由になります。
CPUクーラーとあわせてCPUグリスを手に入れる必要があります。最近では高性能なグリスがいくつも発売されているので選び放題ですね。
虎徹 MarkⅡ(サイズ社の製品ページ)
別モノに生まれ変わったサイズ「虎徹 MarkⅡ」検証(エルミタージュ秋葉原)(2017年の記事)
マザーボード
マザーボードはATX規格から1万円台前半で購入可能なものを選定しました。安価なマザーボードを選ぶと全体の価格を抑えられます。
また、マザーボードはMicro ATX規格のものにすると少しだけコストを抑えることができます。けれども、ATX規格は拡張性が高い上に比較的安価なマザーボードが各社から発売されています。特にこだわりがなければATX規格かMicro ATX規格のいずれかで問題ないと思います。
Intel系マザーボードは、価格帯と評判を考慮して選ぶならASRock「Z390 Pro4」、ASUS「TUF Z390-PLUS GAMING」、MSI「Z390-A PRO」あたりが使いやすいかもしれません。どれも売れ筋のようですが、特にASUSの「TUF Z390-PLUS GAMING」の人気が高いようです。
ASRock Z390 Pro4
ASUS TUF Z390-PLUS GAMING
私の場合は、今使っているマザーボードがASRock製のため、Intel系マザーボードを選ぶならASRockのZ390 Pro4でも問題ないと考えています。
ASRockのZ390 Pro4はソケットがLGA1151、チップセットがIntel Z390で第9世代のIntel製CPUに対応しています。メモリも色々なクロックの製品が幅広く使用できます(対応メモリは要確認)。
PCIe Gen3 x4 Ultra M.2スロットが2基搭載されており、今では定番となっているM.2 SSDも問題なく使用できます。
グラフィック出力にはHDMI、DVI-D、D-Subが装備されています。PCIEは、PCIE×16が2、PCIE×1が3となっています。USBは十分な数が搭載されており、USB3.1 Gen2の二つのうち一つはType C端子になっています。
マザーボードは同一の価格帯であれば大体似たり寄ったりのスペックになっています。売れ筋で評判の良いものを選べば間違いありません。とはいえ、マザーボードの仕様は公式ページで事前にしっかりと確認する必要があります。
チップセット(INTEL):Z390のマザーボード 人気売れ筋ランキング(価格.com)
ASRock Z390 Pro4(ASRock公式サイトの製品ページ)
ASUS TUF Z390-PLUS GAMING(ASUS公式サイトの製品ページ)
MSI Z390-A PRO(MSI公式サイトの製品ページ)
メモリ
メモリは売れ筋のDDR4 2666Mhzからごく一般的な製品を選んでみました。容量は8GBを二枚挿して16GBとするのが多数派かもしれません。
メモリは1枚挿しでも使用できますが、通常は同じものを2枚挿してデュアルチャンネルで動作させることが一般的です。
半導体が用いられているメモリは、パソコンを構成するパーツの中でもっとも価格が変動します。2020年6月現在では、DDR4 2666Mhz 8GB×2(16GB)が8,000円程度で推移しています(価格は日々変動します)。
現在、売れ筋のメモリには次のようなメモリが挙げられます。
CORSAIR DDR4-2666MHz VENGEANCE LPX Series 8GB×2枚(16GB)
CFD PC4-21300 DDR4-2666 8GB×2枚(16GB)
予算に余裕のある方はRGB機能のあるメモリやオーバークロックされたメモリも選択肢に入ります。
全体の価格を低くするためには容量を16GBから8GBに変更すると良いかもしれません。ただし、負荷のかかる作業を行うためには最低でも16GB積んでおいたほうが望ましいと思います。また、私たち一般ユーザーが普通に使用する分には32GBは不要と思われます。
SSD
SSDはこれから自作する場合にはSATA接続のSSDではなくNVMe接続のM.2 SSDを選ぶべきです。
SSDはWestern Digital 、kingston、Crusial、シリコンパワー、サムスンなどの候補があります。いずれも有名メーカーで評価の高い製品も多いため、どれを選んでも良さそうです。容量は使用目的に応じて500GBか1TBを選んで、データ保存用に別途SSDもしくはHDDを増設する形で問題ないと考えています。
容量500GB程度の安価なものは大体8,500円前後です(価格は日々変動します)。
Kingston SSD A2000 500GB M.2 2280 NVMe PCIe Gen 3.0 x 4
Western Digital SSD 500GB WD Blue SN550 PC M.2-2280 NVMe
シリコンパワー SSD 512GB 3D TLC NAND M.2 2280 PCIe3.0×4
全体の価格を下げる場合はSATAの2.5インチSSDに変更すると良いかもしれません。
グラフィックボード
パソコンの用途がゲームや動画編集であればグラフィックボードは必須です。私は動画編集がメインでゲームはほとんどしません。しかし、グラフィックボードの性能を動画のエンコードに活かすことができるため、ある程度の性能の製品を使いたいと思っています。
予算に制約がなければRTX 2060以上のグラフィックボードを選びたいところです。しかし現実的には1万円台半ばから3万円程度の価格帯の製品が候補になります。
価格の制約と性能のバランスを考えると「GTX 1660」あたりが妥当ではないでしょうか。
玄人志向 NVIDIA GeForce GTX 1660 搭載 グラフィックボード 6GB デュアルファン GALAKURO GAMINGシリーズ GG-GTX1660-E6GB/DF
ZOTAC GAMING GeForce GTX 1660 SUPER Twin Fan グラフィックスボード ZTGTX1660S-6GBTWIN/ZT-T16620F-10L VD7109
GTX 1660は2万円台半ばから後半という絶妙な価格設定になっています(価格は日々変動します)。ZOTACのGTX 1660 Superは群を抜いたお買い得感があるように思います。
全体の価格をさらに下げるにはグラフィックボードのランクを下げることも検討しなければいけません。GeForce GTX 1650であれば1万円台半ばでも購入できるため、価格的にはお買い得感があると思います。最新ゲームをする予定がなければ候補に入れることもありかなと思います。
今回の計画では、RTXシリーズは性能が高いけれども価格が高いという理由によって候補から除外しました。
グラボは無難にGTX 1660やGTX 1660 Superあたりで良いかなというところです。GTX 1660あたりは2020年6月現在、大体25,000円から30,000円前後で入手できます(価格は日々変動します)。
グラボを選定するときは、ベンチマークの結果だけではなく出力端子の種類と数に注意を払う必要があります。種々の製品の中にはDP、HDMI、DVIが一つずつといったものも少なくありません。個人的にはDisplayPortとHDMIが合計4個搭載されているものは汎用性が高いと思っています。あとはHDMIの対応バージョンを確認しておくことでしょうか。
Radeonシリーズにもコスパの高い製品があるため候補として検討する必要があります。中でもMSIの「Radeon RX 570 ARMOR 8G J」あたりが好評のようです。このグラフィックボードは有名YouTuberの方も取り上げておられたのではないでしょうか。
【2019年11月更新】グラフィックボード・ビデオカード性能比較ベンチマークテスト(ドスパラ)
電源
2020年5月中旬頃までは低価格帯の在庫も潤沢だったように記憶していますが、2020年6月以降では低価格帯の電源を中心に品切れが続出しているという印象を受けます。玄人志向やAntecなど低価格帯の電源が軒並み売り切れてしまっています。
私自身は高品質の電源を買うべきという考えを持っています。今使用している電源もAntec製の安すぎず高すぎずというそれなりのモデルだったと記憶しています。
しかし、全体としての価格を下げる場合には電源の価格をいかに抑えるかが肝要になってきます。6,000円程度の低価格の製品を選ぶと全体の価格を下げることができます。
玄人志向 NEXTシリーズ 80 PLUS Bronze 600W ATX電源 KRPW-N600W/85+
安い電源と高い電源でもっとも異なる点は、電源ケーブルが取り外せるかどうかという点にあります。安い電源はケーブル類が本体に直付けされており、必要なケーブルだけを使うということができません。
それに対して、1万円を超える価格の電源の多くは、フルモジュラー式ケーブルが採用されており、電源ケーブルを必要に応じて着脱することができます。電源ケーブルが着脱できることは想像している以上に便利です。
その他の点としては、電源ファンの静音性が問題となります。価格に関わらず、評判を確認しながら慎重に選ぶ必要があります。価格が高くてもファンのノイズがうるさい製品や高周波音のする製品があります。また、製品によらず個体差が生じることも念頭におかなければなりません。
ケース
ケースはもしかすると一番重要なものかもしれません。パソコンは一度組み上げると中身を見ることはそれほど多くはありません。パソコンマニアならまだしも普通の人がパーツを頻繁に入れ替えることはほとんどありません。
一方、パソコンのケースは毎日眺めることになります。そのため、外観のデザインは想像以上に重要です。見た目が気に入らないケースやUSBコネクタが挿しにくいケースは除外するべきです。
ケースは安いものであれば5,000円前後、一般的なもので1万円前後の価格設定になっています。色々調べた中では Corisair や NZXT のケースがシンプルでカッコイイという印象を受けました。最近ではホワイトやシルバーなど明るい色のケースの人気が高いようです。
NZXT H510 ミドルタワー [ White & Black ] CA-H510B-W1
最近のケースは5インチベイが搭載されていないものが多く、また内部が見えるように側面がガラス仕様になっている製品が多いことが特徴です。
OS
OSは特段の事情がない限り「Windows 10 Home」で問題ないと思います。
今後もOSを使い回すことを考えると「Windows 10 Home 日本語版/May 2019 Update適用/パッケージ版」が良いかなと思います。
まとめ
今回はintelのCPUを使って自作する案を考えてみました。上を見るとキリがなくなってしまうので、ほどほどの性能で予算に合うパソコンが出来上がるようにしたいものです。
コストパフォーマンスの高いパソコンを作るとなると、各パーツの性能がほどほどな製品を選択することが重要になってきます。特に電源とケースをどうするかで値段がかなり変ります。
そうしたことを踏まえて、どんなパーツを組み込むか、どのパーツの価格を抑えるかなど考えていきたいと思います。パーツ構成を色々と思案することが自作PCの醍醐味ですね。
そういう訳で次はAMDのCPUで作る場合について考えます。